こんにちは、クソ踏みゲーマーです。
前回の記事で書いた通り、友人からPOSSESSION MAGENTAというクソゲーを投げつけられて感想文を提出することになってしまったので、いい加減書いていこうと思います。
20代男性(乙女ゲー未経験)のありのままの視点をお届け致しますが、以下の感想・解説はあくまで僕の個人的な好みの上に成り立っていることを念頭に置いて読んで頂ければと思います。
!注意!
この記事にはPOSSESSION MAGENTAの重大なネタバレ及びキャラや作品に対する罵詈雑言が含まれます。
~目次~
・初めに
・世界観 / 用語集
・システム
・ルート分岐
・キャラクター
・シナリオ
・その他
・まとめ
~始めに~
名前にPOSSESSIONという単語が入っているから、という雑な理由でプレーすることになってしまったこのゲームですが、そもそもこのゲームは乙女ゲーである以上、男オタクがプレーすることを想定していません。
なので批評をする上ではその点を考慮する必要がありまして、本当に"乙女ゲーとして"クソかどうかを見極める事が出来るのかという不安もありました………が、結論から言えばどの視点から見てもしっかりクソだったのでその辺はご安心下さい。
当然ながらそれを取り扱うこの記事もクソです。今の内にスクロールバーの長さを確認して絶望しておきましょう。
~世界観 / 用語集~
本作には「ポゼる」や「ピュリする」といった謎の単語や、解説無しには理解し難い不可解な設定が多数登場します。感想を書く上でどうしてもこれらに触れない訳にはいかないので、先にまとめて解説していきます。
・世界観
主人公、レズ、攻略対象6名の合計8名がメインキャラで残りはほぼモブです。なお、以降の文に登場する犯人と黒幕は別人である事に注意して下さい。
メインキャラ8人が通う高校とその周辺が物語の主な舞台となっており、ストーリー開始時点では特におかしな要素はありません。
しかし序盤で主人公にしか見えない謎のタロットカードが見つかったことを皮切りにファンタジー要素が増え始め、最終的には唐突な異能バトルの末にこの世界と対になる異世界の存在が明かされるという超展開が待っています。
『謎の現象の数々はこの異世界からやってきた存在によって引き起こされていた』という最低限の説明はあったものの、その異世界に関する情報は皆無に近く、カードについても詳細不明のままゲームは終わります。
・タロットカード
主人公が道端で時々拾う光を放ったり放たなかったりする大アルカナのカード。黒幕がとある目的を果たす為に異世界から持ち込んだもので、これが原因で様々な事件が起こります。
最初は主人公以外見ることも触れることもできませんが、一度ポゼった人物(後述)は主人公と同じように認識することができるようです。
≪21 世界≫と≪19 太陽≫のカードには特殊な力が秘められているらしく、ラスボスと主人公が必殺技をぶっ放すのに使っている描写がありました。どういうことなの…
なお、ストーリーには22枚の内半分程度しか出てきませんが、カード全回収がトゥルーエンドの条件になっているのでプレーヤーにとっても大変面倒な代物です。
・ポゼる
作中では「突然人が変わったように衝動的・暴力的な行動を取るようになってしまう現象」と説明されていて、ポゼっている最中は瞳が異様に赤くなるという特徴があります。ポゼった際の症状には個人差があるものの、大半は周囲への暴行や器物破損を伴います。
ポゼる原因は犯人がそこらにばら撒いたタロットカードであり、タロットの意味に対応した悩みを抱えた人間が近づくと反応して発狂させる仕組みとなっているそうです。
ポゼった対象に主人公が後述のピュリファイを行うことで対象は正気を取り戻しますが、数日間放置された場合は心臓発作を起こして死亡します。
・ピュリファイ / ピュリする
ポゼった対象を正常な状態に戻すことのできる唯一の方法がこのピュリファイで、ピュリファイを行うことをピュリすると呼びます。
主人公のみが行使できる力で、ポゼった人物にポゼらせたカードをかざすことでカードの影響を除去できます。カードを間違えると効果がありませんが、システム編で説明する理由からプレーヤーが意図的に間違えない限り失敗することはまずあり得ません。
ストーリー序盤では原理不明でしたが、後に主人公の中に埋め込まれた≪19 太陽≫のカードの力によるものだと判明しました。黒幕は主人公に眠る太陽のカードの力を覚醒させたいが為に犯人にカードをばら撒かせたようです。自分でやれよ。
~システム~
本作はよくあるAVGで基本的にはテキストを読み進めながら時々選択肢を選んでいくシンプルなスタイルですが、それに加えてこのゲーム特有のシステムが2つほどあり、その双方がこのゲームのクソゲー化に拍車をかけています。
シークレットサーチシステムはストーリーに関係無くひたすら画面右下を注視してタロットカード探しを強いられる苦行で、カード全回収が条件となるトゥルーでは避ける事が出来ません。とは言えこれはwikiを見ながら進めれば済む話なので今回はこれ以上触れません。
他方のカードチョイスシステムなるモードは、公式サイトで
ストーリー中、ポゼってしまったキャラクターを主人公がピュリファイ(浄化)するために、そのキャラクターに対応するカードの選択を行う画面です。ここでの結果によって今後のストーリーが大きく分かれます。
と解説されている通り所持しているカードの中から正解のカードを選ぶ専用画面です。見た方が早いと思うのでスクショを貼ります
『物語のクライマックスで自分の選んだカードが結末を大きく変える』と言えば聞こえはいいですが、基本的に正解を選ばないと先へ進まないのでとっとと浄化しましょう。
これだけあるカードの中から正解を見つけ出すとなるとシナリオをよく読んでしっかり考えないといけないんじゃないか、と心配になる方もいらっしゃるでしょうがご安心ください。
この通り正解のカードのみモノクロで表示される上、ポゼらせている最中のカードがモノクロになるという情報は普通に序盤で出てきます。
そもそも浄化に必要なカードはチョイスの直前で手に入ったものなので間違えようがなく、このシステムの存在意義は非常に怪しいと言わざるを得ません。
3回連続で間違えると専用のBADエンド(CG付)が見れるので回収時にはわざと間違える必要があるのですが、正解しようが間違えようがいちいちクソ長い演出が入るので非常に面倒で鬱陶しい存在です。もちろん周回中でもスキップは出来ません。
~ルート分岐~
このゲームは全8章構成の癖してその内1〜7章が共通ルートです。舐めてますね。
7章までは選択肢で対象の高感度が上下し、8章開始時に最も好感度の高いキャラのルートに入るだけの非常にオーソドックスなシステムです。一応いつでも好感度が確認出来る点は評価できますが、別にこのゲームに限った長所ではありません。
以下はエンドの紹介です。
①ベストエンド/グッドエンド
通常ルートのEDです。どちらも展開に大差はありませんが、ベストの方のみ二人は幸せなキスをして終了します。
②トゥルーエンド
物語の真相が明かされるEDで、攻略対象の一人である奏の派生エンドです。残念ながら他のキャラと結ばれるトゥルーは存在しません。
③バッドエンド1
2~7章でカードチョイスをわざと3回間違えるクソ面倒な手順を踏むと見られるEDです。大半は主人公がポゼった攻略対象に殺されて終わります。
④バッドエンド2
8章序盤までに特定の条件を満たしていないと分岐するEDです。主人公と攻略対象がラスボスにボコられて終わります。救いはありませんが、専用のCGが非常にエモいのでこのゲームの中ではマシな展開と言えるかもしれません。
~キャラクター~
ようやくキャラクターまできました。この時点で既に相当な文字数となっていますがまだまだ続きます。頑張って着いてきて下さい。
メインキャラクター
美原 鈴
主人公。この手のゲームの宿命なのですが声帯が無く、名前が変更可能なので他のキャラの声帯から名前を呼んで貰えません。
才色兼備な優等生、穏やかで周りへの心配りもできるといった恵まれた設定ですが、実際は優柔不断な上に優等生設定も全く活かされていません。こうなると顔は良いが意志は弱い女にしか見えず、公式サイトのキャラクター詳細を見ても頭パンケーキ程度の情報しか出てこないのでやはり顔以外の長所を見つけるのは困難を極めます。
距離感のおかしい男性相手でも頬を赤らめてホイホイついていくその様からは、大学でテニサーに入って[削除済]ような未来が容易に想像できてしまいます。中学ではテニス部だったという設定までついているのは偶然でしょうか。
攻略対象は何故か出会い頭から鈴への好意がカンストしており、こうなると恋愛もクソもありません。ポゼった際には揃いも揃ってとにかく鈴に固執します。
色んな男に殺される仕様上、バッドエンドでは窒息死・溺死・墜死・焼死・出血多量によるショック死など、一通りの死因を体験しています。お得ですね。
祭 綾女
主人公の親友にして今作最大の良心です。男嫌いのレズで女子人気が高い桃髪メガネと属性をやや過剰に詰め込まれています。
鈴のことをハニーと呼び慕い、何かあれば得意の空手で守ってくれる頼もしい存在です。
公式サイトのキャラクター紹介でも『趣味:鈴の観察』『特技:鈴の居場所ならすぐ分かる』『今一番欲しいもの:もちろん鈴』『好きな異性のタイプ:興味無い』といった有様で、一途なクレイジーレズであることが伺えます。
なんと個別ルートが存在し、8章のラスボス戦では鈴の為に命をかけて犯人と対峙するイケメンっぷりを発揮します。EDは大切な親友!みたいな雑な終わり方をしますが、この時点で男性陣のフラグをへし折っているので将来的にこの2人が結ばれるのは確定的に明らかですね。
一章でポゼった際には保健室で鈴を押し倒して強姦未遂を起こした挙句、抵抗されると逆上してそのまま絞殺しようとしました。
一章のカードチョイスはチュートリアルを兼ねている為不正解のカードを選ぶことができず、綾女のみバッドエンド1がありません。
(文句無しのハッピーエンド)
女キャラの説明に気合入れすぎました。ここからは駆け足でいきます。
音成 奏
幼少期から鈴の家庭で里子として暮らしてる鈴の家族兼友達みたいな存在。基本的には鈴の兄を自称してますが、彼女のことを異性としても意識しているようです。
本作のメインヒーローという扱いで、シナリオ上で異常に優遇されています。特にトゥルールートでは鈴を差し置いて黒幕に単身で真っ向から対峙し、会話のみで問題を解決する快挙を成し遂げました。もう全部こいつ一人でいいんじゃないかな。
ポゼった際には野外で強姦未遂を起こした上、鈴を川に沈めて溺死させようとします。また、この際にカードを自ら回収してピュリファイを妨害する好プレーも見せてくれました。
静間 草太
鈴や奏の幼馴染で全体的になよっとしてるツンデレ系ゲーマー。なんでもかんでもゲームに例えようとするオタク特有の痛さはありますが、基本的に実害は無いので不快度は作中屈指の低さを誇ります。
悪いキャラでは無いのですが幼馴染ポジで競合する奏の陰に隠れがちであり、ツンデレキャラですら後述の大河パイセンと被ります。
ポゼった原因も奏への劣等感が大きく、奏ルートの彼は見てるこっちが悲しくなる程です。ニュアンスで言えばBSS(僕の方が先に好きだったのに)と大差ありません。
ポゼった際にも強姦未遂どころか鈴への暴力自体ほとんど起こさない健全さを発揮します。その代わり観覧車の頂上から鈴の目の前で飛び降りてトラウマを植え付けようとする陰湿さは流石根暗オタクといったところでしょうか。
バッドエンド1では飛び降りた草太を助けようとしてゴンドラから乗り出した鈴がバランスを崩して墜落死します。何をしとるんだ、折角殺されなかったというのに。
橙山 光介 (以下、ゲロうんこ)
主人公の同級生で自称英国紳士の性犯罪者です。個別音声ミュートという非常にありがたい機能があったのがせめてもの救いでした。
ポゼるまでもなく女性の肩を抱く・頬にキスするといった非常識な猥褻行為を繰り返し、ピュリファイ後も改善されません。男嫌いの綾女をポゼらせる原因を作った戦犯であり、全体的に足を引っ張るだけで目立った活躍はありません。
ポゼった際には綾女と大体同じ行動をとりますが、クソ可愛い綾女と違ってゲロウンコは絵面が汚く見るに堪えません。バッドエンド1もそのまま絞め殺すだけと極めて地味です。クソですね。
青葉 大河
生徒会長を務める底抜けに明るいミリオタの先輩。可愛い。基本的に真面目だけど冗談も言うし鈴への態度も常識的。かしこい。ポゼった際にも自分を律しようとする描写が見られ、正義感が強いことが伺える。かっこいい。
綾女に次ぐ良心で、共通シナリオでの活躍も個別ルートも申し分ありません。かっこよさも可愛らしさもツンデレ要素も主人公要素も全部持ち合わせている完璧ヒーローですね。彼氏にするならこんな人がいいです。
ポゼると色々あった末、3Dプリンタで自作した違法モデルガンを所持して街を徘徊します。ピュリできなかった場合は鈴と揉み合いになった末に銃が暴発して撃ち殺してしまい、絶望して自身もこめかみを撃ち抜いて自害します。
(これになりたい)
蘇 明杰
突如転校してきた態度だけはこの上なくデカい中華製の億万長者。全ては金で買えると信じており、初対面の鈴を金で買おうとするなど異常な行動が目立ちます。ただ、ゲロうんこと違ってピュリ後は徐々に改善していき、ギャグ要員としての側面も出てくるのでまだマシなキャラとも言えます。
軽く調べたところ、こんな男が好みというプレイヤーもそれなりにいるようで、ちゃんと需要に応えたキャラになってるんだなあと感心しました。ちなみにゲロうんこが好きって人は見つかりませんでした。
ポゼった際の行動が全キャラで最も気持ち悪いのも特徴です。鈴をホテルに連れ込んでの強姦未遂に飽き足らず、刃物で衣類を切り裂くゲスさまで見せつけてくれました。
ピュリファイ出来ればちゃんと反省しますが、失敗するとそのまま鈴を切り刻んで「これで俺のものになった」とか抜かします。お前精神状態おかしいよ・・・
桃井 優一郎
バ畜戦士のぼーっとしてるやつ。作中唯一の一年生で鈴たちの後輩にあたります。
数学が得意なんてもんじゃなく、『問題を普通に解いてたらロシアの国家機密にアクセス出来ちゃった』みたいなとんでも展開が出てきてああもう滅茶苦茶だよ。サマーウォーズといい勝負ですね。
別に悪いキャラでは無いのですが草太と同様影が薄くて不遇です。登場が遅かったのも痛く、彼のいいシーンがクソシナリオに埋もれがちなのは否めません。
ポゼると抑鬱状態に陥ったかと思えば急に発狂して暴れたり図書室に立て籠もったりと精神科のお世話になるべき症状が現れます。鬱病を経験した身としては読み進めるだけで非常に辛いものがありました。
強姦未遂は起こしませんが自分の問題を鈴に転嫁して暴行を加え、ピュリできなければそのまま首を掻っ切って殺害します。
身近な人が暴れ出したら迷わず警察を呼びましょう。
その他のキャラ
校長
ラスボス。黒幕によって≪21 世界≫のカードを与えられ、ポゼらされてしまった被害者でもあります。
狂った結果、学校の質が下がったからカードの力で悪い生徒の間引きを行うとか言い出しちゃいます。生徒の不審死が相次げば入学希望者が減るとは考えなかったのでしょうか。
戦闘時は多様な召喚獣での攻撃と衝撃波によるガードを多用しますが、HPが減ると一度だけ秘奥義を撃ってくるので注意が必要です。
リュディガー
黒幕。金髪長身で瞬間移動能力を持つ謎の人物。その正体は異世界人で、彼の世界はこっちの世界の人々の心が豊かじゃないと滅んじゃうそうです。え、なんで???
鈴の持つピュリファイの力で彼の世界の闇を無理やり追い払うことを目的としているようです。鈴の実の父親であるという衝撃的な展開もありましたが、正直校長の召喚獣の方がインパクトあったんだよなあ。
文月 美玲
クソ占い師のオバサン。なんか知らんけど急に現れて助言してくるやつ。鈴の実の母親。
鈴の力を利用しようとするリュディガーから彼女を匿う為に養子に出した点は評価できますが、それなら何故もっと鈴から離れて暮らさなかったのでしょう。詳細は省略しますが、このクソババアが首都圏に住んでさえいなければリュディガーが鈴を見つけられなかった可能性は非常に高かったんですよね。
桐生
プロローグでポゼって行方不明になり、翌朝磔状態の遺体で見つかった第一の被害者。残念ながら彼の死体発見シーンがシナリオのピークです。
~シナリオ~
先に言っておくと、本作のクソ要素の9割5分はシナリオによるものです。
一つ一つ問題点を見ていきましょう。
・陳腐なシナリオ
このゲームのシナリオをおおまかに説明すると、
プロローグ (事件発生。カードが見つかり出す)
↓
一章 (仲間キャラが増え、事件の捜査を始める。仲間がポゼり始める)
↓
二~七章 (攻略対象6人が順にポゼる。事件の捜査はほぼ進まず)
↓
八章 (唐突に犯人が校長だと分かる。なぞのばしょに校長しばきに行く)
となります。
見ての通り鈴達の捜査ごっこは基本的に意味を為さず、八章で校長が犯人だと判明する直前でもまだ別の教師を疑っていたという体たらくです。
それもそのはず連中が捜査と言い張る活動は「カードをもっと見つけないと!街へ探索に行こう!」みたいなノリで、事件が起こっていない時のSOS団の活動より実入りがありません。
話し合いでも「カードとポゼることが関係あるのかな?」などと小学生でも確信できる因果関係について延々話し続けます。それに加えて後述する繰り返しシナリオがテンポの悪化に拍車をかけ、結果としてひたすら参考書の同じページを読み続けるような苦痛を味わえます。
プロローグの冒頭ではバーで飲んでいた教師が謎の男にカードの力で洗脳されるシーンがあるのですが、これによって校長とリュディガーは初登場の時点で犯人、黒幕であると容易に想像できてしまいます。
推理が苦手な人にも犯人当てを楽しんで貰おうというシナリオライターの粋な計らいは、残念ながらIQ70以上の人間には簡単過ぎて楽しむに値しません。仮にもミステリーを名乗る以上、やはりこの点でも陳腐と言わざるを得ないでしょう。
・極度の繰り返し
二~七章のほぼ繰り返しシナリオはポプテピピックが神アニメに思えてくるほど酷く、個別ルートの内容が似通っていることを指す『金太郎飴』という罵倒文句はこのゲームの場合共通ルートにも当てはまります。
毎度毎度、対象と仲良くなる→対象がポゼる→対象の悩みに気付く→ピュリファイという展開が同じなので次に何が起こるか予測できてしまい、テキストの一つ一つがプレーヤーの副交感神経を容赦なく活性化させます。
当然個別ルートとなる八章も使い回しであり、『校長の元へ向かいながら他の仲間の話→校長と対峙→追い詰める→校長一転攻勢→こちらも一転攻勢→脱出→遅れて来た仲間の前でイチャつく』という一連の流れはCG回収の過程で13回ほど見る羽目になります。
このように全体的にライターが手間をかけずに作ったことが伺えるシナリオは、 この青空の下で(ESP)を彷彿とさせる退屈さをおよそ6時間に渡って提供してくれるなんとも豪華な仕様となっていました。
逆に最も変化があったのは校長の攻撃方法で、7人それぞれに違う召喚獣を従えて応戦していました。どこに手間かけてるんですかね……
・コロコロ変わる世界観
本作は同級生の不可解な死体が見つかるミステリーらしい良い初動から一転し、最終的にはファンタジーや異能バトル要素を盛り付けて素敵なクソに仕上がりました。
例えるならオレンジジュースに牛乳とレモン果汁をぶち込んだように、レシピ次第では美味しくなりそうなものを適当に混ぜてゲロみたいな液体を完成させてしまった。そんな残念さを感じます。
公式はこのゲームを『愛と狂気のミステリー恋愛AVG』と銘打っていますが、どう考えても一番のミステリーはこのシナリオにGOを出した責任者の判断でしょう。
ミステリーという言葉は定義が難しく、人によってどこまで許容できるかが大きく変わるのでこの際異世界の話や魔法のカードについては多めに見ます。それにしたって校長との戦闘シーンは明らかにミステリーの範疇を超えたRPGじみたものであり、終盤になって突然始まった謎の戦闘に度肝を抜かれたプレーヤーは多いと思われます。
参考までに校長のセリフの一部を紹介します。
「『塔の暴雷』よ!愚か者どもを打ち砕けえええ!!」
「『節制の邪杯』よ!ヤツらを絶望へと突き落せ!!」
「それは『女帝の抱擁』だ!ソイツに抱かれ、地獄へ落ちるがいい!!」
「『恋人の翼』よ!私の正義に仇する者を全て滅ぼすのだ!!!」
普通にかっこいいかもしれない。
・スマホ太郎
トゥルールートの佳境でリュディガーは鈴を異世界へ連行し、ピュリファイの力で自分達の世界を救済しようとします。当然鈴達は拒絶し、なんやかんやで奏はリュディガーとタイマンでの対話を試みます。
先述の通りリュディガーはこちら側の人間が悪い心を持てば滅びてしまう意味不明な設定の異世界からおいでになっており、時間的猶予が無い以上鈴の力を使って無理にでも世界を救う必要がある、というのが彼の主張です。本作にしては珍しく理屈が通っている主張でした。
対する奏は以下の提案をします。
「この時代にはスマホって便利なもんがある。俺達が力を合わせて人々の心をピュリファイなんて必要無いくらいに変えてやる。一年以内にな!」(要約)
黒幕相手に「スマホで頑張って世界を良くするから一年待って」なんて言ってのけた乙女ゲーのキャラクターは後にも先にもこいつだけでしょう。
散々激しい闘いが繰り広げられた後のこのセリフです。興ざめなのは言うまでもありません。
・ラストシーン
リュディガーとの交渉が上手くいった後、鈴と奏は改めて想いを伝え合います。それは別に良いのですが、場所が奏の実の両親が眠る墓前というのは如何なものでしょう。雰囲気的に。
一応、奏が墓に向かって「俺この人と幸せになるから見守っててね」とありきたりなセリフを言っていたのでまあいいのかな?とも思えたのですが、
は?
物語最後の感動的なキスシーンが墓場。本当にそれでいいのか。
~その他~
・擬音
大したことではないのですが、この手のゲームではキスシーンの「チュッ」みたいな擬音は地の文で表すものだと思います。
ポゼマゼにそんな固定観念は通用しません。容赦なくセリフ欄でチュッチュします。
・ダイナミック
シナリオは散々なポゼマゼですが、基本的に作画は安定しており背景にも乱れはほとんどありません。
しかしなぜかダイナミック殺人点字ブロックは完備しています。
~まとめ~
散々文句をつけてきましたが、もちろんこのゲームにもいいところは色々ありますので最後に個人的な良い点・悪い点のTOP3を挙げて評価を〆たいと思います。
良かった点
3位 キャラクター
キャラクター編でも書きましたが、ゲロうんこや無能刑事といったごく少数の人物を除けば一人一人の人物像は魅力的なものです。
二~七章にて選択肢次第で発生する個別イベントは唯一金太郎飴要素が薄いオアシスであり、キャラの良さがしっかり感じられました。特に大河先輩とバイクでツーリングするイベントは青春!って感じでよかったですね。
2位 音楽
クソゲーの法則とか言わない。
退屈極まりないシナリオですが、一応盛り上がる場面ではシーンによくマッチしたいい感じのBGMが流れます。特に校長戦の専用曲は熱くてよかったです。
主題歌の「EMOTIONAL POSSESSION」も曲名通りエモさ強調したテクノポップ?でゲームの世界観に合った名曲だと思います。カラオケで歌えるらしいんで今度歌ってみたいですね。
1位 綾女の存在
最後まで僕の精神がもったのはほぼ綾女のおかげです。クソシナリオで荒んだ心も、二人のその後についてあれこれ考えると少し綺麗になるのでオススメです。
悪かった点
3位 キャラの会話
先述の通りキャラの会話は恐ろしく内容が薄く、カードやポゼに関して同じような話題を延々と繰り返します。
また、真剣なシーンでも悪い意味で学生っぽいノリが全開なので常識的な感性を持つ人間が見ればそれもストレスになるでしょう。
2位 展開の遅さ
3位と若干被りますが、このゲームはとにかく内容が薄いので同じような会話を繰り返すことで文章量を稼いでいます。当然それは読み手に退屈という形で牙を剥きますし、それならまだ終盤の超展開の方が幾分マシに感じました。
1位 ゲームそのものの魅力の無さ
言ってしまえば全部、ということなのですが実際そうだからこう書くしかありません。
このゲームは比較的恵まれたキャラクター、申し分の無いビジュアル、単体で見れば面白そうなタロットカードという要素、雰囲気のあるBGMといった良い点が色々ありながら、その全てをクソシナリオが台無しにしています。
いくら良い点があろうとそれを感じられないなら存在しないのと同じであり、実際僕は「綾女と大河先輩、すこだ…」以外にプラスの感情は残りませんでした。
展開、セリフ、金太郎飴、などなど一つ一つはギリギリ耐えられるレベルでも、それらのクソが一気に襲い掛かってくることで放たれるその圧倒的な邪気はVitaを放り出したくなるには十分でした。
最後まで読み進める頃には自分自身がポゼってしまうのではないか、という不安さえ感じられる作品でしたが一応人間でも読破は可能であることを自分の身で実証できたので良かったです。
これで安心して人に勧められますね。
以上がPOSSESSION MAGENTAを完走した感想となります。
いやほんと疲れました。クソゲーハンターってこんな苦行をコンスタントにやってるんですね。これならDP足19マラソンやってる方がまだマシだと思います。
とりあえず、慣れないクソゲーレビューはこの辺で終わっておきます。最後までお読み頂きありがとうございました。
ではまた